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東京地方裁判所 昭和63年(ワ)599号 判決 1989年2月27日

亡小松すぎ遺言執行者

原告

三条能生

右訴訟代理人弁護士

高芝重德

松田隆次

被告

貝沼菊枝

右訴訟代理人弁護士

小野晃嗣

被告

兼尾美恵子

被告

小松久彌

被告

兼尾光子

被告

小菅和子

主文

一  被告らは、原告に対し、

1  別紙物件目録一及び二記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六二号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

2  別紙物件目録三及び四記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六三号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

3  別紙物件目録五ないし八記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六四号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

4  別紙物件目録九ないし一四記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六五号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

5  別紙物件目録一五ないし二一記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六六号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。

二  被告貝沼菊枝に対して損害賠償を求める原告の訴え(請求原因2に基づく請求にかかる原告の訴え)を却下する。

三  訴訟費用はこれを五〇分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  主文一項同旨

2  被告貝沼菊枝は、原告に対し、金八六五万九六〇〇円及びこれに対する昭和六三年三月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  2項につき仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁(被告ら)

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  被告らに対する抹消登記請求の請求原因

(一) 小松すぎ(以下「訴外人」という。)は、昭和六二年一一月三日死亡した。

(二) 訴外人の相続人は、いずれも訴外人の嫡出子である被告らであり、他に訴外人の相続人はいない。

(三) 訴外人は、死亡当時、別紙物件目録一ないし二一記載の不動産(以下「本件各不動産」という。)を所有していた。

(四) 訴外人は、東京法務局所属公証人木村博典作成昭和六二年第一九二号遺言公正証書(以下「本件公正証書」という。)により、遺言をした(この遺言を以下「本件遺言」という。)。

(五) 訴外人は、本件遺言により、原告を遺言執行者に指定した。原告は、訴外人が死亡した後直ちに遺言執行者への就職を承諾し、その旨を被告らに通知した。

(六) 本件公正証書には、左記のような記載がある。

訴外人は、この遺言書で次のとおり遺産分割の方法を指定する。

(1) 被告小松久彌は別紙物件目録一及び二記載の不動産を相続する。

(2) 被告兼尾美恵子は同目録九、一〇及び一五記載の不動産並びに同目録一一及び一二記載の不動産の各一部を相続する。

(3) 被告兼尾光子は、同目録一三、一四及び一六ないし一九記載の不動産並びに同目録一一及び一二記載の不動産の各一部を相続する。

(4) 被告小菅和子は、同目録三ないし八、二〇及び二一記載の不動産を相続する。

(七)(1) 訴外人は、本件遺言において、右(六)のとおり、「遺産分割の方法を指定する。」とか「相続させる。」といった表現をしているが、訴外人が本件遺言をした真の意思は、自分の死後その財産を円満に特定の相続人に帰属させ、相続人間に紛争が生じないようにすることにあったのであるから、訴外人は、本件遺言により、被告小松久彌に別紙物件目録一及び二記載の不動産を、被告兼尾美恵子に同目録九、一〇及び一五記載の不動産並びに同目録一一及び一二記載の不動産の各一部を、被告兼尾光子に同目録一三、一四及び一六ないし一九記載の不動産並びに同目録一一及び一二記載の不動産の各一部を、被告小菅和子に同目録三ないし八、二〇及び二一記載の不動産をそれぞれ遺贈したものである。

(2) 仮に、訴外人がした本件遺言のうちの右(六)記載の内容が、遺産分割の方法を指定したものであるとしても、訴外人は、本件遺言によって、原告を遺言執行者に指定しているのであるから、原告は、訴外人の遺言の趣旨に従った遺産分割の実行(指定された分割方法に従って、各相続人に相続を原因とする所有権移転登記をすること)をする権限を有しているというべきである。

(八)(1) 別紙物件目録一及び二記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六二号をもって、同目録三及び四記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六三号をもって、同目録五ないし八記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六四号をもって、同目録九ないし一四記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六五号をもって、同目録一五ないし二一記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六六号をもって、いずれも、昭和六二年一一月三日相続を原因とし、被告らを共有者(特分は各五分の一)とする所有権移転登記(これらの登記を総称して、以下「本件各登記」という。)がされている。

(2) 本件各登記は、いずれも原告による本件遺言の執行を妨げるものであるから、民法一〇一三条により、全て無効の登記である。

(九) よって、原告は被告らに対して、

(1) 別紙物件目録一及び二記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六二号の所有権移転登記の、

(2) 同目録三及び四記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六三号の所有権移転登記の、

(3) 同目録五ないし八記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六四号の所有権移転登記の、

(4) 同目録九ないし一四記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六五号の所有権移転登記の、

(5) 同目録一五ないし二一記載の不動産について、東京法務局目黒出張所昭和六二年一一月一七日受付第三四三六六号の所有権移転登記の、

各抹消登記手続をすることを求める。

2  被告貝沼菊枝に対する損害賠償請求の請求原因

(一) 請求原因1(一)ないし(八)を引用する。

(二) 被告貝沼菊枝は、本件各登記の手続をした。

(三) そのため、原告は被告らに対して請求原因1に基づく本件各登記の抹消登記請求を提起せざるをえなくなり、そのために次の(1)及び(2)の費用を支出したが、その費用は遺言執行費用として相続財産の負担となり、その分相続財産が減少した。

(1) 被告らに対する本件各登記の抹消登記請求の訴訟(訴額金三億三〇三〇万六一〇〇円)を提起するのに要した貼用印紙額金二六五万九六〇〇円

(2) 被告らに対する右訴訟の提起、遂行を原告代理人に委任したことにより、原告代理人に対して支払うことを要する報酬額金六〇〇万円

(四) 原告は、遺言執行者として相続財産につき管理処分権を有するから、相続財産に生じた右のような損害の賠償を求める権限をも有すると解すべきである。

(五) よって、原告は被告貝沼菊枝に対して、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害金八六五万九六〇〇円及びこれに対する不法行為の日の後である昭和六三年三月九日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  被告貝沼菊枝

(一) 請求原因1(一)ないし(三)の事実は認める。

(二) 同1(四)の事実は知らない。

(三) 同1(五)のうち、原告から被告貝沼に対して原告が遺言執行者に就職することを承諾した旨の通知がされたことは認めるが、その余の事実は知らない。

(四) 同1(六)の事実は知らない。

(五) 同1(七)の事実は否認する

(六) 同1(八)(1)の事実は認めるが、(2)は争う。

仮に、訴外人が本件遺言をしていたとしても、訴外人は、本件遺言により、遺産分割方法の指定をしているだけであるから、訴外人の遺産は、本件各不動産を含めて、訴外人の相続人である被告らの遺産分割前の共有の状態にある。本件各不動産につきなされた本件各登記は、いずれも右の権利関係を忠実に公示するためにされたものであるから、何ら遺言執行者の遺言の執行を妨げるものではない。

本件遺言によりされた遺産分割方法の指定は、各相続人の法定相続分に従ってなされていないので、相続分の指定を伴うものであるが、それにより被告貝沼菊枝は遺留分を侵害された。そこで、被告貝沼菊枝は、被告兼尾美恵子及び兼尾光子に対しては昭和六二年一二月二六日到達の書面で、被告小松久彌及び被告小菅和子に対しては昭和六三年三月五日到達の書面で、それぞれ遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をした。したがって、訴外人の遺産は、被告貝沼菊枝の遺留分減殺請求権の行使により修正された各相続人の相続分に従い、訴外人のした遺産分割方法の指定を尊重して、各相続人間の遺産分割協議により分割されることになり(協議ができない場合には、遺産分割の調停又は審判によることになる。)、それまでは、訴外人の相続人は誰も訴外人の遺産である本件各不動産につき単独の所有権を主張できないことは明らかである。

(七) 同2(一)に対する認否は、同1(一)ないし(八)に対する認否と同一である。

(八) 同2(二)の事実は認める。

(九) 同2(三)の事実は否認する。

(一〇) 同2(四)は争う。

2  被告兼尾美恵子、同小松久彌、同兼尾光子及び同小菅和子

請求原因1(一)ないし(六)及び(八)の事実は認める。

三  被告貝沼菊枝の本案前の抗弁

被告らに対して請求原因1に基づき請求の趣旨1記載の抹消登記請求をすること及び被告貝沼菊枝に対して請求原因2に基づき請求の趣旨2記載の損害賠償請求をすることは、本件遺言により遺言執行者と指定された原告の権限には属さないから、原告には原告としての当事者適格がない。したがって、原告の本件訴えは却下すべきである。

四  被告貝沼菊枝の本案前の抗弁に対する認否

被告貝沼菊枝の本案前の抗弁は争う。

第三  証拠関係<省略>

理由

一被告らに対する本件各登記の抹消登記請求(請求原因1に基づく請求)について

1  共同訴訟の形態について

所有権移転登記の共有名義人を被告として当該登記の抹消登記手続を求める訴訟は、固有必要的共同訴訟と解すべきであり(最高裁判所昭和三八年三月一二日判決民集一七巻二号三一〇頁参照)、仮にそう解されないとしても、右のような訴訟は、紛争解決の実効性の観点から共同訴訟人間における合一確定が法律上要求されているというべきであるから、少なくとも類似必要的共同訴訟であると解すべきである。したがって、被告らに対する本件各登記の抹消登記手続を求める訴訟も固有必要的共同訴訟であるか(請求原因1(八)(1)の事実は当事者間に争いがなく、この事実によると、原告は抹消を求める本件各登記の共有名義人全員を被告としていることが明らかである。)、少なくとも類似必要的共同訴訟であるので、いずれにしても右訴訟には民事訴訟法六二条の適用があることになる。

2  被告貝沼菊枝の本案前の抗弁について

請求原因1(一)の事実は当事者間に争いがなく、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから<証拠>を総合すると、請求原因1(四)及び(五)の事実を認めることができる(なお、原告から被告貝沼菊枝に対して原告が遺言執行者に就職することを承諾した旨の通知がされたことは当事者間に争いがない。)ところ、遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する(民法一〇一二条一項)のであるから、本件遺言の遺言執行者である原告が、本件各登記が本件遺言の執行のための妨げとなるとしてその抹消登記手続を求める訴えにつき、原告としての当事者適格を有することは明らかである。

3  本案について

前記のとおり、請求原因1(一)の事実は当事者間に争いがなく、また、同1(四)及び(五)の事実はこれを認めることができる。そして、同1(二)及び(三)の事実は当事者間に争いがなく、<証拠>によると、同1(六)の事実を認めることができる。

そこで、訴外人のした請求原因1(六)の内容の遺言が、原告が同1(七)(1)で主張するように、遺贈の趣旨であるといえるかにつき検討する。

一般に、遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究してその文言の趣旨を確定すべきものではあるが、遺言公正証書は、公証人が遺言者の口授した内容を筆記して作成するものであり、遺言者の口授した内容が不明確であるときには、公証人は、当然遺言者の真意を確認して、その内容を確定した上筆記するのが通例であると考えられるので、公正証書遺言の場合には、自筆証書遺言の場合とは異なり、遺言者の真意は、遺言公正証書の文言によっても不明確であるときとかその他特殊な事情の認められるとき以外は、原則として遺言公正証書の文言によって表現されている内容のとおりであると解すべきである。

そうすると、<証拠>によると、本件公正証書は、三か条からなり、第一条には、請求原因1(六)の外、「被告貝沼菊枝は土地五筆及び建物六棟(いずれの不動産も特定されている。)を相続する。被告らは、他の不動産、有価証券、現金、預金、その他の財産及び債務を各五分の一ずつ均等に分割して相続する。」との記載があり、第二条には、「訴外人は、祖先の祭祀を主宰すべき者として被告小松久彌を指定する。」との記載があり、第三条には、「訴外人は、原告を遺言執行者に指定する。」との記載があることを認めることができる(この認定に反する証拠はない。)が、本件公正証書の第二条と第三条の記載内容は特に第一条の解釈に影響を与えるようなものではないから、第一条は原則としてその文言の内容にだけ従って解釈すれば足りることになる。

右の考え方に従って、第一条をみると、「訴外人は、この遺言書で次のとおり遺産分割の方法を指定する。」との文言があり、この文言からすると、訴外人は、本件遺言により、遺産分割の方法を指定したものと解釈する外はなく(弁論の全趣旨によると、訴外人の指定した遺産分割の方法のとおり分割した場合に、各相続人がその法定相続分に応じて相続することにはならないと認められるから、本件遺言は、相続分の指定もしていると解される。)、到底遺贈をしたものと解釈することはできない。

なお、遺言書(遺言公正証書も含めて)の中に、遺言者が、特定の財産を特定の相続人に「相続させる。」との記載がある場合に、この「相続させる。」という文言が遺贈の趣旨であるか、遺産分割方法の指定の趣旨であるか、あるいはそれ以外の趣旨であるかについては、文言上明確さを欠くため、争いの生ずることが多いが、本件公正証書中には、前記のとおり、遺産分割の指定であることを表現した明確な文言が存在するのであるから、右のような争いの生ずる余地はない。

また、原告は、訴外人が本件遺言をした真の意思は、自分の死後その財産を円満に特定の相続人に帰属させ、相続人間に紛争が生じないようにすることにあった旨主張するが、仮にそうであったとしても、そのような意思を有している者でも、その意思を実現するため、遺産分割方法の指定という方法を選択することも当然ありうると考えられることからして、原告の右主張事実をもって、遺言者の真意を遺言公正証書の文言によって表現されている内容のとおりに解することの妨げとなりうる特殊な事情ということは到底できない。そして、右事情は本件全証拠によってもこれを認めるに足りない。

次に、原告の請求原因1(七)(2)の主張について検討する。

前記認定のとおり、訴外人は、本件遺言により、特定の財産をあげて共同相続人間の遺産の分配を具体的に指示するという方法でもって相続分の指定を伴う遺産分割方法の指定をし、あわせて、原告を遺言執行者に指定したものである。このような遺言がされた場合には、遺言者は、共同相続人間において遺言者が定めた遺産分割の方法に反する遺産分割協議をすることを許さず、遺言執行者に遺言者が指定した遺産分割の方法に従った遺産分割の実行を委ねたものと解するのが相当である。そうすると、本件遺言の遺言執行者である原告は、本件遺言によって指定された遺産分割方法に従って、被告小松久彌に別紙物件目録一及び二記載の不動産を、被告兼尾美恵子に同目録九、一〇及び一五記載の不動産並びに同目録一一及び一二記載の不動産の各一部を、被告兼尾光子に同目録一三、一四及び一六ないし一九記載の不動産並びに同目録一一及び一二記載の不動産の各一部を、被告小菅和子に同目録三ないし八、二〇及び二一記載の不動産をそれぞれ帰属させるため、いずれも相続を原因とする所有権移転登記を経由すべき権限、職責を有することになる。

なお、被告貝沼菊枝は、本件遺言により自己の遺留分を侵害された旨主張しているが、仮に右主張が認められるとしても、本件遺言の趣旨を前記のとおり解すると、遺言執行者が遺産分割を実行することにより相続開始の時にさかのぼって特定の遺産が特定の相続人に帰属することになるので、被告貝沼菊枝は、遺贈により遺留分を侵害された場合と同様に、自己の遺留分を保全するに必要な限度で、遺留分減殺請求権を行使し、特定の相続人からその相続人に帰属した遺産を取り戻すことになると解すべきである。

そうすると、前記のとおり、請求原因1(八)(1)の事実は当事者間に争いがなく、本件各登記が存在すれば、原告は前記の権限、職責に属する所有権移転登記をすることができないから、本件各登記が存在することにより、原告が右の職責を果たすことを妨げられていることは明らかである。

したがって、原告は、被告らに対して、本件遺言の執行を妨げている本件各登記の抹消手続を求める権利を有することになるので、原告の被告らに対する本件各登記の抹消登記請求はいずれも理由があることになる。

二被告貝沼菊枝に対する損害賠償請求(請求原因2に基づく請求)について

まず、本案前の抗弁について検討する。

ある人の不法行為により相続財産が減少した場合、その人に対する損害賠償請求権が相続人に直接帰属することは明らかであるところ、その損害賠償請求権の行使は、遺言の執行に必要な行為とは到底いえないから、本来遺言執行者の権限には属さないというべきであり、右のような損害賠償請求権の行使は相続人においてすべきである。

そうすると、被告貝沼菊枝の不法行為により訴外人の相続財産が減少したことを原因として被告貝沼菊枝に対して損害賠償を求める訴えにつき、遺言執行者である原告には原告としての当事者適格がないことは明らかである。

したがって、被告貝沼菊枝の本案前の抗弁は理由があり、被告貝沼菊枝に対して損害賠償請求を求める原告の訴えは、不適法として却下すべきことになる。

三結論

以上の次第で、原告の請求のうち、被告らに対して本件各登記の抹消登記手続を求める請求は理由があるからこれを認容し、被告貝沼菊枝に対して損害賠償を求める訴えは不適法として却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官谷口幸博)

別紙物件目録<省略>

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